

考える力とつながる力を育てるバイリンガル教育

2歳のRちゃんは、ケーバイエヌのナニーと一緒に折り紙で遊びながら、「What’s this?」と英語で尋ねるようになりました。数か月後には、「Same!」と自然に返せるようになり、今では友達とも積極的に遊ぶようになりました。保護者の方は、言葉だけでなく、Rちゃんの心の成長を感じていると話します。
バイリンガル教育は、英語を学ぶこと以上に、子どもの考える力や人とのつながりを築く力を育てることが、脳科学の研究からも明らかになっています。このコラムでは、その科学的な根拠と、家庭で今日から始められる簡単な方法をお伝えします。
切り替えが思考力を伸ばす 脳科学が示す、バイリンガル教育のチカラ

子どもが2つの言語を学ぶと、どんな変化が生まれるのでしょうか?
最新の研究では、思考力と社会性の両方が育つことが分かっています。
クール博士の研究(2003年)では、生後9か月の赤ちゃんが英語を話す大人と12回遊んだだけで、英語の音を聞き分けられるようになったと報告されています。
テレビや音声だけの学習では、この効果は見られませんでした。
Rちゃんも、ナニーと「What’s this?」とやりとりする中で、自然に英語を吸収していきました。
人と関わる中での学びが、子どもにとってどれほど大切かがわかります。
プリアツィカス(2020年)の研究では、バイリンガルの子どもは注意力が高く、問題解決に強い傾向があることが示されました。
言語を切り替える経験が、頭を柔らかくし、集中力を保つトレーニングになるのです。
Rちゃんが英語と日本語の両方を使いながら遊ぶ時間は、まさにこの「考える力」を育てる時間になっています。
ベラヘンら(2020年)は、バイリンガルの子どもが相手の気持ちを理解しやすく、協力的に遊ぶ傾向があると報告しています。
2つの言語に触れることで、子どもは視野が広がり、さまざまな価値観に触れる経験が生まれます。
Rちゃんが友達と積極的に遊ぶようになったのも、その表れのひとつです。
英語は“対話”でこそ身につく。研究が示す、対面での学びの力とは?顔と顔を合わせて育つ「ことば」と「こころ」

言葉は、誰かと顔を合わせて話すことでこそ、深く、楽しく、自然に身についていきます。
クール博士の研究でも、対面でのやりとりが子どもの関心を引き出し、学びを加速させることが明らかになっています。表情の変化や声のトーンが、「英語って楽しい!」という気持ちを育ててくれるのです。
また、アッシャー(2009年)の「トータル・フィジカル・レスポンス(TPR)」という考え方では、身体を動かしながら覚えることで、記憶に定着しやすくなるとされています。たとえば、「Jump!」「Touch your nose!」といった言葉遊びは、子どもたちにとってごく自然な学びのスタイルです。
ナニーとの対話や遊びの時間は、タブレットや映像教材とは違う、“生きたことば”にふれる体験です。そこには、まなざしや笑顔、リアルな反応があります。こうした関わりが、子どもの英語力だけでなく、自信やコミュニケーション力の土台を育てていくのです。
英語も日本語も、子どものペースで楽しく育てよう家庭でできる、3つのシンプルなバイリンガル習慣

バイリンガル教育を始めるとき、大切なのは「英語だけ」に偏らず、日本語の環境も丁寧に育てていくこと。
ここでは、今日から無理なく取り入れられる、シンプルで効果的な3つの習慣をご紹介します。
まずは、おうちでの日本語のやりとりを大切にしましょう。
「これはケーキだね!」「どんなお城にしようか?」――そんな会話の中で、言葉はどんどん豊かになります。
Rちゃんも、家庭での日本語の遊びが、英語の学びを支える土台になっていました。
1日10分、子どもの好きな遊びにちょっぴり新しい日本語を足してみて。
親の笑顔と言葉かけが、最高の教材になります。
バイリンガルナニーとの遊びは、英語を自然に身につけるチャンスです。
Rちゃんも、ナニーとの時間を通して英語に親しみ、友達との関わりも積極的になっていきました。
家庭では、「今日はどんな遊びをしたの?」と日本語で話しかけることで、英語と日本語がバランスよく育ちます。
週1回、3時間ほどのナニープログラムから始めてみて。
何よりも「楽しかった!」と思える体験が、学びの原動力になります。
絵本の時間は、親子のこころが通う大切なひととき。
「今日はどんなお話にしようか?」――そう聞いて一緒にページをめくる時間が、想像力や安心感を育てます。
「大好きだよ」と語りかける日本語が、子どもの自己肯定感につながっていきます。
1日5分でもOK。寝る前に日本語の絵本を一緒に読んでみましょう。
図書館や絵本アプリも上手に活用して、無理なく続けてみてください。
バイリンガル教育は、ことばの「重ね着」日本語の親子時間が、英語の学びの土台に

バイリンガル教育は、英語をただ「詰め込む」ものではありません。
家庭での日本語のやりとりを大切にしながら、英語に自然に触れる機会をつくる――それが、子どもの学びに最も効果的なアプローチです。
たとえば、お砂遊びで「どんなお城にしようか?」、夕飯づくりで「これはニンジンだね」と声をかける。
そんな日常の中の小さな日本語のやりとりが、子どもの心の土台をしっかりと育ててくれます。
その上にそっと重なるのが、ナニーとの英語の時間。
英語は、“もうひとつの世界”として、やさしく広がっていくのです。
コラムの内容についてもっと詳しく知りたい方へ参考資料
- Kuhl, P. K., Tsao, F. M., & Liu, H. M. (2003). Foreign-language experience in infancy: Effects of short-term exposure and social interaction on phonetic learning. Proceedings of the National Academy of Sciences, 100(15), 9096–9101.
- Pliatsikas, C. (2020). Exploring the cognitive benefits of bilingualism: From brain structure to cognitive control. Bilingualism: Language and Cognition, 23(5), 933–944.
- Verhagen, J., & Leseman, P. P. M. (2020). The effects of bilingualism on social cognition in children. Child Development Perspectives, 14(2), 87–93.
- Kuhl, P. K. (2004). Early language acquisition: Cracking the speech code. Nature Reviews Neuroscience, 5(11), 831–843.
- Asher, J. J. (2009). Learning Another Language Through Actions (7th ed.). Sky Oaks Productions.
- Richards, J. C. (2015). Key Issues in Language Teaching. Cambridge University Press.